おきざりにされた記憶は
すくいあげた指から
とめどなく溢れ
夜の海へ
流れ落ちた

規則正しく
えらびとられた沈黙
鉱石のように
水底で微かに光を放ち
残された世界を
美しくかたどってゆく

目覚めたその朝に
輪郭はない
おそらくすべては滲んで
いつか白夜が訪れる

夏の夜
白亜の壁に影を刻み
泣きつかれて
あてどなく彷徨う
他の方法をしらない

帰れない幼子
誰に抱かれて眠るでもなく
ただ知らぬ間に
震えを忘れて
その身ごとまどろみに
おちておゆき
できる限りのかなしみを連れて

果てのない空白
辿り着いた先の
かつてのまなざしに
とけてまじりあい
もう息をすることはない



'09 0714 : エスカトロジー