一本の大水路
底にゆれる都市を踏んだのち
水の味が濃い

帰る船の
波の上を渡っていく白刃が
血まみれの海にする
誰かが僕を見て
共倒れのさいごにさえ
触れあいたくないと言う

床に落ちた鏡
割り入れる卵白の透明に映る顏が
ぬけおちて
皿の上にほとほと震える

この世界のどこが好きだと問う
アルペジオとアルペジオをつなぐ
ペダルの残響が好きだと答える

すべての街に
透明な縫合痕がある
糸がぬけおちたのち
穴ぼこだけが点々と
道を残す

たいした苦しみもなく
僕はここからそこへ漂流する
空漠を歩いている

間と間をつなぎ
何もないところに満ちた
水の味が濃い


'14 0105 : パーマネント・バケーション
( 1980 - ジム・ジャームッシュ )